Microplastic Crisis: マイクロプラスチックの危機
日本に帰国して最初に驚いたのは、プラスチック製品の多さでした。日本の100円ショップや300円ショップのクオリティの高さには驚かされます。自販機の種類も豊富で、コンビニエンスストアのテナント数は世界一だそうです。日本ではプラスチック容器に入ったドリンクを持ち歩いて飲む姿がとても印象的です。
一方、オーストラリアでは、飲み物は各自のボトルに入れて持ち歩くのが主流です。幼稚園に通う子供たちから仕事に行く大人まで、ほとんどの人がマイボトルを使用しています。私も今でもガラスやステンレス製のマイボトルを愛用しています。
私が住んでいたオーストラリアは、プラスチックの環境汚染に真剣に取り組んでいます。2021年から各州で始まった「プラスチック製品使用の規制」は、その一例です。例えば、政府指定のプラスチック製買い物袋は厚さが決められており、違反すると販売店や卸業者に100万円以上の罰金が科されます。テイクアウト用のプラスチック容器やカトラリーは廃止され、土に還るバイオグレーダブルプラスチックに置き換わりました。
エリアによっては、水のボトルも紙容器に変更され、ペットボトル入りのソフトドリンクは販売されなくなりました。コカコーラ製品も、オリジナルのガラス容器に入った商品の需要が増え、顧客は選択肢が広がりました。
当時、私は大手食品卸問屋で営業職に従事しており、この劇的な規制に対応するため多くの時間を費やしました。プラスチックに慣れていたレストランや店舗のオーナーたちは、土に還るバイオグレーダブル容器に戸惑い、スープが盛れない、サイズが合わない、Uber Eatsに耐えられるかなど、多くの問題を解決する必要がありました。
オーストラリアの人々は、持ち帰り寿司に付いてくる魚型の醤油容器が大好きです。日本ではあまり見かけなくなりましたが、日本の大手容器メーカーがオーストラリア市場の半分を賄っていました。2021年にはタスマニアからプラスチック製醤油容器がなくなり、プラスチックサシェも問題になりました。
ビーチライフを楽しむオージーたちは、ビーチで寿司を食べた後、使い捨ての魚型醤油容器が海に流れ、海洋生物に害を与えることが問題視されています。魚型醤油容器だけでなく、毎年プラスチックストローも大量に海に流れています。オーストラリアだけでも年間35億本のストローが使われ、毎年80,000トンのプラスチックが海洋を汚染しています。ストローの使用時間は平均20分にもかかわらず、200年間残存します。
環境問題だけでなく、マイクロプラスチックによる人体への影響についても、オーストラリアでは10年以上前から政府機関を通じて市民に情報が提供されています。特に赤ちゃんの哺乳瓶やおしゃぶり、一部の乳幼児向け製品にBPA(ビスフェノールA)が使用されることは禁止されています。BPAフリーと表示された商品を目にしたことがあるかもしれませんが、依然としてプラスチック製品であることには変わりません。容器や包装から熱によって化学物質が滲み出し、体内に入ると考えられています。子供の成長過程でこの影響が未診断のままやり過ごされ、後に健康問題が発生するケースも少なくありません。
では、BPAとは何か? BPAはビスフェノールAという化学物質の略称で、1891年に発見されました。ポリカーボネート製プラスチックや樹脂の原料として使用され、ポリ塩化ビニール(塩ビ)の添加物としても利用されます。このBPAが健康に害があるとして報告されたのは1997年ごろです。オーストラリアでは、至る所でBPAフリーの表示を目にします。
では、マイクロプラスチックとは何でしょうか? 次のノートで詳しく説明します。
続きは↓
マイクロプラスチック汚染の深刻性と健康リスク ーマイクロプラスチックとは?
photo by Karina Tess