旅のはじまりは、香りとともに - ゴールドコースト
最初の滞在地は、私が17年暮らした最後の街、ゴールドコースト。
海と山に抱かれた程よいサイズのこの街は、大きすぎず、忙しすぎず、流行に飲まれすぎない。
私の性格にぴったりと寄り添い、一番住み馴染んだ場所になった。
自然が大好きな私にとって、ビーチから走っても1時間以内に辿り着くヒンターランドの山脈は特別な存在だった。
その森は、植物の形態から少なくとも2,000万〜3,000万年の歴史を持つといわれる。
車やオートバイで走り抜ける道の先には、果てしなく空へ広がる緑。
ブッシュウォーキングでその中を歩けば、時間の感覚が消えていく。
雨上がりの森は、湿った木々の香りと、ユーカリや草木が放つ甘く爽快な香りに満ちていた。
それは胸の奥まで澄みわたり、心を静かに整える。
ビーチでは、年中裸足で砂を踏みしめ、テイクアウェイのコーヒーを片手に海と空だけを眺める。
そんな何気ない日常こそ、贅沢な時間の使い方だった。
忘れかけていた、オーストラリアで学んだ時間の流れ。
この旅のように、またゆっくりと味わっていこう。