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香りで帰る場所 - Australia

香りで帰る場所 - Australia

Starbucksでパソコンを開く。
今日はシャワーを浴び、すっぴんのまま。
東京に一泊して名古屋へ戻った朝、3週間分の疲れが押し寄せる。

真冬のオーストラリアから、灼熱の日本の夏へ。
あまりの温度差に、体も心も現実に馴染まない。
食欲はなく、パソコンに向かっても一時間が限界。
静かな場所を求めては横になり、また少し作業しては横になる。

昨日まで見上げていた広い空。
甘くてフレッシュなユーカリの香り。
ここには、あの空気がない。
代わりにあるのは、エアコンの埃っぽい匂いと、時間に追われる感覚。

今年行かなくて、いつ行くの?

ビジネスパートナーでもある息子の言葉が、3年ぶりの帰郷を決めた。

空港の扉を抜けた瞬間、朝の光とユーカリの甘い香りが包み込む。
湿った土、亜熱帯の森、何百種類ものユーカリやティーツリー。
そこに海風が溶け合い、唯一無二の香りをつくる。
深く息を吸い込むと、胸の奥がほどけていく。

あぁ、帰ってきた。
そう告げるのは、風景よりも、この香りだ。

もし訪れることがあれば、ぜひ香りでこの土地を感じてほしい。
記憶に残る旅は、鼻先から始まるのかもしれない。